tkira26's diary

吉良貴之@法哲学のブログ。

「人」が裁く意味、考えよう

 下野新聞「日曜論壇」に書いた小文です(転載許諾済)。

 アメリカ連邦最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の逝去にともない、日米の裁判官イメージの比較、AI裁判官の可能性、裁判員裁判の意味、といったことをまとめてみました。

  なお、画像の下にテキストと補足もあります

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下野新聞2020年10月4日朝刊・日曜論壇、吉良貴之「「人」が裁く意味、考えよう」
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身の回りのナッジ、意識を

 下野新聞「日曜論壇」に月1で連載している記事です(転載許諾済)。今回はナッジについての解説と、先日の本屋B&Bさんでの出版記念イベントで私が話したようなことを簡単にまとめてみました。小さなコラムなので特に踏み込んだものではありませんが、ご関心を持ってくださった方は、那須耕介橋本努 編『ナッジ!?』(勁草書房、2020年5月)をぜひどうぞ。画像の下にテキストと解説もつけています

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下野新聞朝刊2020年8月30日・日曜論壇「身の回りのナッジ、意識を」
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緊急時の人権保障、議論を

 下野新聞「日曜論壇」に書いた小文です(転載許諾済)。

 憲法上の緊急事態条項について、むやみに危険視するのではなく、選択肢の一つとして考えていきましょうというものです。ヴァーミュール(吉良訳)『リスクの立憲主義』のような議論を日本国憲法でも考えてみるとどうなるか、というものでもあります。

 なお、画像の下にテキストもあります

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下野新聞(2020年7月26日朝刊、日曜論壇)吉良貴之「緊急時の人権保障、議論を」
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リバタリアンはパンデミックにどう対応するか?

というと、いかにも食い合わせが悪そうである。明日、世界が滅ぶとも自由を尊重せよという過激派はおそらくそんなにおらず、国防や警察の一環として公衆衛生を位置づける穏健な論者が多そうな感じ。

エボラ出血熱のときの議論をもとにざっと分けると、1)そこでの検疫や隔離は科学的エビデンスに基づいて最小限であるべき、ぐらいか、2)自由と公衆衛生を対立させる問題設定そのものが不適切であって、衛生は自由の条件である、みたいに論じる方向がある。1はたいした中身がないし、2は自由を実質化する邪悪なものである。こんな選択を迫られるときは問いの立て方が間違っているわけだが、さてどうすべきか。

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池袋 → 宇都宮の時刻表

まったく個人的なメモです。

 

池袋 → 宇都宮

0502(赤)0651 0539(赤)0729

0601(赤)0751 0611(大)0811 0635(赤)0818 0617(赤)0842

0708(赤)0858 0728(直)0914 0754(赤)0929 0759(赤)0951

0813(直)1000 0826(赤)1016 0849(赤)1035

0906(赤)1054 0914(直)1050 0944(赤)1135 0946(直)1128 0959(小)1145

1011(大)1220 1041(直)1214 1051(直)1235

1115(直)1248 1144(直)1328 1150(赤)1338

1214(直)1345 1217(大)1407 1245(直)1429

1315(直)1454 1317(赤)1516 1345(直)1527 1351(赤)1539

1415(直)1547 1417(赤)1608 1444(直)1629

1515(直)1647 1517(赤)1707 1544(直)1727

1615(直)1748 1630(赤)1820

1714(直)1844 1729(大)1925 1746(古)1941

1823(赤)1958 1844(古)2034 

1923(大)2056 1933(赤)2126

2006(赤)2152 2032(大)2225 2045(赤)2243

2126(赤)2303 2130(直)2320 2153(赤)2343

2216(赤)2359 2236(赤)0029

2305(赤)0104 2334(赤)0125

 

8時に間に合うには: 0539(赤)0729、0622(新)0734、0601(赤)0751

8時半に間に合うには: 0611(大)0811 0635(赤)08180647(新)08030708(新)0821

1限に間に合うには: 0635(赤)0818、0617(赤)0842、0708(新)08210730(新)0830

2限に間に合うには: 0813(直)1000、0826(赤)1016、0855(新)1009

11時に間に合うには: 0849(赤)1035、0914(直)10500934(新)1049

13時に間に合うには: 1051(直)12351115(直)12481130(新)12391144(新)1249

15時に間に合うには: 1245(直)14291315(新)14261345(新)1449

A. ヴァーミュール(吉良貴之 訳)『リスクの立憲主義』(勁草書房、2019年12月)

 エイドリアン・ヴァーミュール(吉良貴之 訳)『リスクの立憲主義』(勁草書房、2019年12月)という訳書が出版されました。 出版社ページで詳細目次を見ることができます。

  分類としてはアメリ憲法学の本ですが、憲法基礎理論・憲法思想史的な内容なので、もちろん法哲学を含め、いろんな分野の方に面白く読んでいただけるのではないかと思います。内容的には、権力の暴走に対する「予防」に偏りがちだったこれまでの立憲主義から、権力の最適なパフォーマンスを引き出すための権限配分=構成を目指すものとしての立憲主義を構想しています。その議論は現在の日本国憲法をめぐる議論にも多くの示唆を与えることでしょう。司法審査に消極的だったりして、やや保守的な議論が多いのは確かですが、単純に行政権への権力集中を説くようなものではありません。憲法をひとつのシステムとして捉え、意思決定論・組織管理論の視点でもって全体を見渡しながらリスク計算を行おう、という穏当な主張がなされています。

 ヴァーミュール氏の紹介と、本書のおおまかな内容、そして若干の問題提起を書いた訳者あとがきが勁草書房サイトで公開されています。ぜひご覧ください。

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 ジュンク堂書店池袋本店では、井上達夫先生の『立憲主義という企て』(東京大学出版会、2019年)と隣に並べていただいておりました。指導の先生の本の隣というのも感慨深いものがありますね。

独学の限界について

 来年度、青山学院大学キリスト教法思想史(科目名は「キリスト教と法思想」前期・金曜4限)を担当する予定なのですが(なんていうと無謀に思われるかもしれませんが、基本的には普通の法思想史で、随所でキリスト教との関係を学生と一緒に考えていく、という感じになります)、それにはキリスト者であることが必要とのこと。で、その証拠に受洗時の心境を書いたもの(「救いの証」)を提出したのですが、せっかくなのでここにも置いときます(吉良貴之「独学の限界について」、日本基督教団・池袋西教会『復活の朝』、2015年2月号)。

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イドリース「肉の家」

 中東政治研究の池内恵先生がツイッターで、ユースフ・イドリース「肉の家」という小説を紹介されていた(Yusuf Idris, Bait min Lahm, 1971。イドリースは現代エジプトを代表する作家である。翻訳が入っているのはこちらの『集英社ギャラリー 世界の文学 (20) 中国・アジア・アフリカ』(集英社、1991年)ぐらいのようなので、とりあえず購入してみた。魯迅クッツェーのような有名な作家の代表作から、現代朝鮮の多様な作家のものまで、いろいろ収録されていてお得である(「中国・アジア・アフリカ」なんて詰め込めすぎだが、それはそれとして)。

 それで「肉の家」を読んでみたのだが、わりあい面白かったので以下に感想を書いてみる。なお、池内先生が紹介されていた文脈とはズレがあるように思ったし、他の方への批判的内容も含まれているのでツイートへのリンクは貼らない。

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集英社ギャラリー 世界の文学 (20) 中国・アジア・アフリカ 明文・ほか/狂人日記、阿Q正伝・ほか/憩園/寒い夜/子夜/夷狄を待ちながら/マルグディに来た虎/黒い警官・ほか/花婿・ほか

集英社ギャラリー 世界の文学 (20) 中国・アジア・アフリカ 明文・ほか/狂人日記、阿Q正伝・ほか/憩園/寒い夜/子夜/夷狄を待ちながら/マルグディに来た虎/黒い警官・ほか/花婿・ほか

 
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トニ・モリスン『パラダイス』から

アメリカのノーベル文学賞作家、トニ・モリスン氏が88歳で亡くなったとのこと。私が2冊、翻訳に関わったドゥルシラ・コーネル先生はモリスンの小説がお好きで、白人男性に対する他者としての女性たちや黒人たちのイメージの源泉として、モリスンの小説のシーンを印象的に取り上げている。以下は『パラダイス』の幻想的な場面から。既存訳を参考にしたが、訳し直した。

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木庭顕「日本国憲法9条の知的基礎」(『法学セミナー』2019年8月号)メモ

 今回の9条論は『憲法9条へのカタバシス』(みすず書房、2018年)の9条関係の部分をもとにした講演録ですが、石川健治「民主主義・立憲主義・平和主義:憲法自衛隊を明記するとはどういうことか」(『法律時報』91巻2号、2019年)など最新文献への参照が加えられています。

 相変わらず難解な部分も多いのですが、9条を直接に「占有」原理に基づかせている点が最大の特徴です。「占有という原理は、凡そ理由を切り、どんな理由であろうと現に占有している分に対して実力を行使することは認めません」(58頁)。これがそのまま9条1項の内容であるという。

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綾部六郎・池田弘乃 編『クィアと法』(日本評論社、2019年6月)

 先日の日本女性学会で刊行前合評会(?)を行った、綾部六郎・池田弘乃 編『クィアと法』(日本評論社、2019年6月)が刊行された。私はそこでコメンテーターとして若干の問題提起を行ったが、以下ではそれをもとに、本書全体の意義について述べてみたいと思う。写真はそのWSの様子(左から執筆者の綾部、志田、池田、コメンテーターの松田さおりの各氏、そして私)。

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日本女性学会WS「「クィアと法」の可能性を考える」(2019.6.16、一橋大学

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ライプニッツ『モナドロジー』90節・試訳

岩波文庫の新訳『モナドジー』の最終節、どうもしっくりこないので訳し直してみた。意志と因果と倫理、三位一体の予定調和を賛美せよ。

 

90. ついにこの完全な統治のもと、よい行いは必ず報われ、悪い行いは必ず罰せられる。すべてはよい人々のよい生へと落ち着く。よい人々は、この偉大な国にあって不満をもつこともなく、自分の義務を果たしたうえで神の摂理を信じ、万物の創造者たる神をしかるべく愛し、模倣する。愛すべき人々の幸福のうちによろこびを見出すような、真正で純粋なる愛の本性によって神の完全性に思いをはせ、称賛する。だから賢明で有徳な人々は、予定されている、つまり先立つ神の意志にかなうように思われるすべてのことに力を尽くすのだ。しかしまた、神の秘められた、それ自体が結果であって決定的であるような意志によって現実にもたらされることにも満足する。というのも、もし我々が世界の秩序を十分に理解したならば、その秩序は我々のうち最も賢い者のいかなる望みさえも凌駕しており、これ以上によく作り変えることなど不可能であると思い知るからである。これは全体について一般に不可能というだけでなく、万物の創造者との正しい関係を有する限り、個体としての我々各自もそうである。正しい関係とは、創造者を単に人間存在の製作者かつ動力因とみなすのではなく、我々の支配者かつ目的因とみなすものである。創造者は我々の意志にとって完全な目的であるべき存在、そして我々を幸福にしうる唯一の存在なのである。

映画「ビリーブ 未来への大逆転(On the Basis of Sex)」

映画「ビリーブ 未来への大逆転」(2018年、アメリカ)を観てきました。脚本がネットで公開されているので(こちら:PDF)、観客はそれを7回読んでいることが当然の前提とされています。したがってネタバレには配慮しないので、そういうことを気にする方は以下読まないでください。

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映画「ビリーブ 未来への大逆転」
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「法と法学の発展」『法学入門』(北樹出版、2019年4月)参考文献 (4完)

3の続きです。

5. 「法典論争」と19世紀ドイツの法学

「法」が紙に書かれたものとして存在することは、現代日本の私たちにとっては当然のことのように思われますが、歴史的には必ずしもそうではありません。個別具体的な判断の積み重ねとしての法原理が法律家共同体になんとなく共有されているとか、各地でまったく異なった慣習法が使われているとか、そういった状況で、国全体で統一した法典を作るには多くの苦労がありました。 

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「法と法学の発展」『法学入門』(北樹出版、2019年4月)参考文献 (3)

2の続きです

4. 「近代法」のめばえ

さて、教科書の都合により、時代が1500年ぐらいすっ飛んで「近代」が始まります。そこはそういうものなのでご理解ください。すみません。

もちろん、ヨーロッパ中世の法思想にもいろいろ面白いものがあるので、いやそんなに飛ばされては困る、という方は自習してください。1つ選ぶとしたら、トマス・アクィナス神学大全』(翻訳で全45巻)かな(詳細はこちら)。

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