tkira26's diary

吉良貴之@法哲学のブログ。

通常の3倍で法学部を楽しもう

 私は映画が好きでよく観ています。本学(愛知大学名古屋キャンパス)はお隣に映画館があるという最高の立地なので、そこも楽しみです。

 映画というのは「コスパのいい」趣味で、1000本ぐらい観れば評論家みたいなことがすぐ語れるようになります。ここで「1000本」というのは私がいま考えた適当な数字ですが、昔だったらたった1000本でえらそうなこと言うな、1万本ぐらい観てから出直してこい、みたいにマウンティングする「シネフィル」という怖い人もいました。本数勝負になるとヒマな人が勝つので、あまり面白くないですね。とりあえず1000本で十分でしょうが、それでも多すぎると思われるかもしれません。映画館で全部観ていたら1回1500円としても150万円もかかってしまいます。もちろん、そこまでする必要はなく、今では Netflix とか Hulu の配信サービスで安く観ることができます。ネット配信のよいところは、倍速再生ができることです。私はだいたい3倍速で観ているので、映画1本が30分ぐらいです。そうすると1日3本ぐらい観ることもそんなに難しくないので、1年で1000本がすぐに達成できます。

 何をおかしなことを言ってるんだ?と思われた方も多いかもしれません。せっかくの作品をそんなふうに猛スピードで消費するとか、それで本当に鑑賞したといえるのかと。しかし、名作は3倍速でも十分面白いと思いますし、どうしても気になるところがあれば戻ってゆっくり観ればいいのです。みんな同じスピードで観るほうがなんだか同調圧力みたいで気持ち悪いのであって、それぞれ好きなスピードで観ればいいではないですか。私だって、映画館で観るときにはマナーを守って他の観客と同じスピードで観ているんですよ。1人で観るときぐらい自由でいいでしょう!

 この話で何が言いたいかというと、現代はそれぐらい、情報を処理するスピードが上がっているということです。ついでにいうと私は将棋も好きなんですが、かつての大名人である羽生善治さんは、現代の将棋界では三段までは「高速道路」があると述べています。三段というのは「プロのちょっと手前」です。そこまでであれば、最新の情報をAIとか使いながら猛烈に摂取すれば、案外すぐ到達できてしまうということです。映画評論だってそうだし、似たような状況はいろんな分野で起こっています。現代は「プロのちょっと手前」に行くのがわりと簡単な時代になっています。いやもちろん将棋の奨励会三段なんてむちゃくちゃ難しいですが、そこはもののたとえで。

 学生のみなさんは、大学では好きなことを自由にやれとよく言われていることでしょう。好きなことがある方はそうしてください。でもたぶん、好きなことなんてよくわからない、という方のほうが多いと思います。そういう方は、映画でもなんでもいいので情報を猛スピードで摂取してみてください。どんなことでも3倍速で1年やれば相当なものだし、何が好きなのかもわかってくるでしょう。

 これは勉強でもそうです。岩波文庫の分厚い古典にいきなりチャレンジして、1日に数ページしか読めなくて、ああ深いなァ~、と思っても後には何も残りません。そんな時間があったら、新書を猛烈に読むほうがずっとマシです。今だったら、世界中の学術論文がインターネットで読めるので、それをがんがん読んでいくのもいいでしょう。いやいや外国語でそんなの読めないよ、と思われるかもしれませんが、最近は DeepL など、いい翻訳ソフトがあるので、おおいに利用するとよいです。――もちろん、そんな勉強の仕方では細かいところがすっ飛ばされてしまうので、正確な理解には至りません。それでも、量は質に転化します。「プロのちょっと手前」には到達できてしまうのです。

 本当にそんなんでいいのか?と不安に思われた方も多いことでしょう。でも、この方法で到達できるのはあくまで「プロのちょっと手前」です。仕事としてその知識を使いこなせる「プロ」になるには、あと一歩が必要です。ちょっと手前まで来て初めて、その一歩が果てしなく大きいことに気づきます。というか、そこがスタート地点です。そこで大学の授業を見つめ直してもらえると、その次の一歩を踏み出すための、案外よくできた材料がたくさん提供されていることがわかります。卒業して仕事していくなかで大学の便利さがよくわかった、と言ってくれる方は多いんですが、それではもったいない。みなさんは3倍速で走って、在学中に気づいてもらいたいと思います。

 

<研究の一般的内容、学問的性格>

 「法哲学」を研究しています。サンデル先生の「白熱教室」とかで有名になった分野で、「正義とは?」「法とは?」などと本気で問いかけています。変なことを考えるのが仕事なので、↑↑ みたいなことを平気で言います。授業もこんな感じです。

 でもあくまで「法」哲学ですので、着地点は「法」だと思っています。いくら面白おかしいことを考えても、法学部での勉強に役立たなければ仕方ありません。法律学で出てくるいろんな論点について、ちょっと変わった角度からゆさぶってみます。それによって、まだまだ考えることがあるんだなあ、法ってすごいなあ、と思ってもらうのが法哲学の役割です。

 

 関連する文章にこんなのがあります。法律家を目指す人以外にも、法哲学とか何の役に立つの?と思ったことのある方向けです。ぜひどうぞ。

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