tkira26's diary

吉良貴之@法哲学のブログ。

「法における知と無知の配置」『現代思想』2023年6月号

本稿は『現代思想』2023年6月号 に執筆した論文の転載である(許可済)。基本的に掲載時のままだが、若干、誤字を修正し、文献情報を追加した。また、ブログの仕様上、表記に変更が生じた箇所がある(傍点による強調は太字で代用した)。 1. 法の不知 「法の…

「裁判と時間」『現代思想』2023年8月号

本稿は 『現代思想』2023年8月号 に執筆した論文の転載である(許可済)。基本的に掲載時のままだが、若干、誤字を修正し、文献情報を追加した。また、ブログの仕様上、表記に変更が生じた箇所がある(傍点による強調は太字で代用した)。 1. 法と時間 「法…

「世代論、運命論、責任論――特定の世代を対象とした公共政策を語るために」『現代思想』2022年12月号

本稿は 『現代思想』2022年12月号 に執筆した論文の転載である(許可済)。誤字や文献情報を若干修正したほかは、掲載時のままである。ただし、ブログの仕様上、表記に変更が生じた箇所がある(傍点による強調は太字で代用した)。 1 世代論の困難 世代論の…

2024.06.05 買った本

Ethics, 134(4) の書評対象になったもの。 Barnes, E. (2023). Health Problems. OUP. Brink, D. O. (2021). Fair Opportunity and Responsibility. OUP. Brock, G. (2023). Corruption and Global Justice. OUP. Collins, S. (2023). Organizations as Wron…

「法思想史」資料置き場

全30回の通史的な授業です。資料を置いときます(徐々に)。 第1回 法思想史を学ぶ意義 第2回 古代ギリシャの法思想 (1) ソクラテス 第3回 古代ギリシャの法思想 (2) プラトンからアリストテレスへ 第4回 ストア派から古代ローマの法思想へ 第5回 古代ローマ…

功利主義と長期主義

今年の国際功利主義学会で、長期主義(long-termism)と気候正義関係の発表が多くあったようなので、発表者とかをメモしておきます。ポスドクレベルの若い人が多いみたい。ツイッターでの高橋礼さんの情報によります。

Rawls' just savings principle

Rawls, J. (1999). A Theory of Justice, reveised edition [1st in 1971]. Harvard University Press. Just savings principle: §44: 251–258; motivation assumption for, 111, 121, 254–256; needed to determine social minimum, 251–252; and time pref…

法理論辞典リンク集

法理論辞典というブログがとても有益なので、リンク集を作ってみた。20年ぐらい前から書かれているが、最近の文献も頻繁にアップデートされている。内容としてはおおむね、憲法を学ぶ学生が押さえておくべき社会科学や哲学の基本用語の解説だが、法・政治哲…

「将来を適切に切り分けること ――エーデルマンの再生産的未来主義批判を念頭に」『現代思想』2019年9月号

本稿は『現代思想』2019年9月号に執筆した論文の転載である(許可済)。掲載時のままであり、修正は行っていない。ただし、ブログの仕様上、ルビの削除など、表記に若干の変更が生じた箇所がある。 1. はじめに:将来は必要か? 私たちは次世代を生み育てな…

法哲学関連の国際ジャーナル

法哲学を専門にしている、英語の国際ジャーナルには以下のようなものがある。ひとまずこれらが、いわゆる「トップジャーナル」(少なくともそれに類するもの)といってよいものだろう。 Ratio Juris Oxford Journal of Legal Studies Law and Philosophy Leg…

井田良『死刑制度と刑罰理論』(岩波書店、2022年)

本書をゼミで読んでいる。いわゆる死刑存廃論の頻出の論点はさほど扱われず(最後の補論で多少の言及がある程度)、メインの内容は、① 刑罰は何のためにあるのかという根本的な問題の考察と、② 近年の日本での重罰化・厳罰化、そして「被害感情」の重視とい…

通常の3倍で法学部を楽しもう

私は映画が好きでよく観ています。本学(愛知大学名古屋キャンパス)はお隣に映画館があるという最高の立地なので、そこも楽しみです。 映画というのは「コスパのいい」趣味で、1000本ぐらい観れば評論家みたいなことがすぐ語れるようになります。ここで「10…

女性映画は何から離反するのか?――アニエス・ヴァルダとケリー・ライカート

一、映画史が排除した起源 映画には明確な起源があるらしい。一八九五年、フランスのリュミエール兄弟が初めて複数の観客に向けて動く映像の公開を行った。伝統的な映画史の記述はそこから始まる。それに先立つ一八九三年のトーマス・エジソンのキネトスコー…

オンライン授業は大学を社会に開く

『下野教育』767号に書いた文章の転載です(許可済)。 PDF版はこちら。 一、アフター・コロナ時代の大学教育へ 新型コロナウイルスの世界的パンデミックは、人々の生活を大きく変えた。本稿執筆時点(2020年4月)でも感染終息の目処は立っていないが、…

世界の女性映画DVDセレクション @TSUTAYA 宇都宮駅東口店

うさぎやTSUTAYA宇都宮駅東口店 にて、2021年5~6月にレンタルDVDセレクションコーナーを作っていただきました。世界の女性映画監督特集!ということで10本選んでいます。できればみなさん、現地でご覧になってレンタルしていただければと思いますが、紹介文…

不寛容の芽生えに警戒を

下野新聞・日曜論壇連載の最終回です。アメリカでの混乱をもとに、言論の自由と寛容のあり方について書いてみました。

家族から社会を構想する

下野新聞「日曜論壇」に書いた小文です(転載許諾済)。 夫婦別姓や同性パートナーシップ制の動きに触れつつ、家族法のあり方について考えました。選択的「なのに」反発されるのはおかしい、ではなく、選択的「だから」反発されるという面を踏まえないと話は…

「現在」の大学に触れよう

下野新聞「日曜論壇」に書いた小文です(転載許諾済)。 オンライン化で大学の知は世界に開かれるという理念的な話と、それを機に社会の潜在的ニーズを探ってリカレント教育を進めていこうという実践的な話です。 なお、画像の下にテキストと補足もあります。…

「人」が裁く意味、考えよう

下野新聞「日曜論壇」に書いた小文です(転載許諾済)。 アメリカ連邦最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の逝去にともない、日米の裁判官イメージの比較、AI裁判官の可能性、裁判員裁判の意味、といったことをまとめてみました。 なお、画像の…

身の回りのナッジ、意識を

下野新聞「日曜論壇」に月1で連載している記事です(転載許諾済)。今回はナッジについての解説と、先日の本屋B&Bさんでの出版記念イベントで私が話したようなことを簡単にまとめてみました。小さなコラムなので特に踏み込んだものではありませんが、ご関心…

緊急時の人権保障、議論を

下野新聞「日曜論壇」に書いた小文です(転載許諾済)。 憲法上の緊急事態条項について、むやみに危険視するのではなく、選択肢の一つとして考えていきましょうというものです。ヴァーミュール(吉良訳)『リスクの立憲主義』のような議論を日本国憲法でも考…

リバタリアンはパンデミックにどう対応するか?

というと、いかにも食い合わせが悪そうである。明日、世界が滅ぶとも自由を尊重せよという過激派はおそらくそんなにおらず、国防や警察の一環として公衆衛生を位置づける穏健な論者が多そうな感じ。 エボラ出血熱のときの議論をもとにざっと分けると、1)そ…

池袋 → 宇都宮の時刻表

まったく個人的なメモです。 池袋 → 宇都宮 0502(赤)0651 0539(赤)0729 0601(赤)0751 0611(大)0811 0635(赤)0818 0617(赤)0842 0708(赤)0858 0728(直)0914 0754(赤)0929 0759(赤)0951 0813(直)1000 0826(赤)1016 0849(赤)1035 090…

A. ヴァーミュール(吉良貴之 訳)『リスクの立憲主義』(勁草書房、2019年12月)

エイドリアン・ヴァーミュール(吉良貴之 訳)『リスクの立憲主義』(勁草書房、2019年12月)という訳書が出版されました。 出版社ページで詳細目次を見ることができます。 分類としてはアメリカ憲法学の本ですが、憲法基礎理論・憲法思想史的な内容なので、…

独学の限界について

来年度、青山学院大学でキリスト教法思想史(科目名は「キリスト教と法思想」前期・金曜4限)を担当する予定なのですが(なんていうと無謀に思われるかもしれませんが、基本的には普通の法思想史で、随所でキリスト教との関係を学生と一緒に考えていく、とい…

イドリース「肉の家」

中東政治研究の池内恵先生がツイッターで、ユースフ・イドリース「肉の家」という小説を紹介されていた(Yusuf Idris, Bait min Lahm, 1971)。イドリースは現代エジプトを代表する作家である。翻訳が入っているのはこちらの『集英社ギャラリー 世界の文学 (…

トニ・モリスン『パラダイス』から

アメリカのノーベル文学賞作家、トニ・モリスン氏が88歳で亡くなったとのこと。私が2冊、翻訳に関わったドゥルシラ・コーネル先生はモリスンの小説がお好きで、白人男性に対する他者としての女性たちや黒人たちのイメージの源泉として、モリスンの小説のシー…

木庭顕「日本国憲法9条の知的基礎」(『法学セミナー』2019年8月号)メモ

今回の9条論は『憲法9条へのカタバシス』(みすず書房、2018年)の9条関係の部分をもとにした講演録ですが、石川健治「民主主義・立憲主義・平和主義:憲法に自衛隊を明記するとはどういうことか」(『法律時報』91巻2号、2019年)など最新文献への参照が加…

綾部六郎・池田弘乃 編『クィアと法』(日本評論社、2019年6月)

先日の日本女性学会で刊行前合評会(?)を行った、綾部六郎・池田弘乃 編『クィアと法』(日本評論社、2019年6月)が刊行された。私はそこでコメンテーターとして若干の問題提起を行ったが、以下ではそれをもとに、本書全体の意義について述べてみたいと思…

ライプニッツ『モナドロジー』90節・試訳

岩波文庫の新訳『モナドロジー』の最終節、どうもしっくりこないので訳し直してみた。意志と因果と倫理、三位一体の予定調和を賛美せよ。 90. ついにこの完全な統治のもと、よい行いは必ず報われ、悪い行いは必ず罰せられる。すべてはよい人々のよい生へと落…