エイドリアン・ヴァーミュール(吉良貴之 訳)『リスクの立憲主義』(勁草書房、2019年12月)という訳書が出版されました。 出版社ページで詳細目次を見ることができます。
分類としてはアメリカ憲法学の本ですが、憲法基礎理論・憲法思想史的な内容なので、もちろん法哲学を含め、いろんな分野の方に面白く読んでいただけるのではないかと思います。内容的には、権力の暴走に対する「予防」に偏りがちだったこれまでの立憲主義から、権力の最適なパフォーマンスを引き出すための権限配分=構成を目指すものとしての立憲主義を構想しています。その議論は現在の日本国憲法をめぐる議論にも多くの示唆を与えることでしょう。司法審査に消極的だったりして、やや保守的な議論が多いのは確かですが、単純に行政権への権力集中を説くようなものではありません。憲法をひとつのシステムとして捉え、意思決定論・組織管理論の視点でもって全体を見渡しながらリスク計算を行おう、という穏当な主張がなされています。
ヴァーミュール氏の紹介と、本書のおおまかな内容、そして若干の問題提起を書いた訳者あとがきが勁草書房サイトで公開されています。ぜひご覧ください。
ジュンク堂書店池袋本店では、井上達夫先生の『立憲主義という企て』(東京大学出版会、2019年)と隣に並べていただいておりました。指導の先生の本の隣というのも感慨深いものがありますね。