tkira26's diary

吉良貴之@法哲学のブログ。

てつがくカフェ@八王子「ファッションから考えるグローバルな正義」

 2017年9月2日(土)に八王子生涯学習センターで、こんなイベントを行いました。開催趣旨の詳しいことは ↓ をご覧ください。

 「服」は私たちにとって文字通り最も身近なものですが、それがどんなふうに作られているかについては案外、知らないものです。いわゆる「ファストファッション」と呼ばれるものの多くは、発展途上国に工場を作っていますが、そこでの劣悪な労働状況が問題になっています。もちろん、そういった状況で利益を得ている企業(や国家)に責任があることは確かですが、消費者としての私たちも何か考えるべきことがあるのではないか、ということで、いろんな方向から意見交換してみよう、ということで開催してみました。

 参加者は15名ほどで、学生さんが中心でしたが、それ以外にも幅広い年代の一般市民の方が集まってくださいました。進行としてはまず、問題提起として、学生サークル「ファッションレボリューション」のみなさんにお話をいただきました。

 

  f:id:tkira26:20170917114303j:plain(写真はぼかしています)

 

 「ファッションレボリューション(FR)」は、衣服に関わる労働問題を考えていく運動で、世界的な広がりを見せているものです。FR のみなさんのお話では、何はともあれ「まず知る」ことが大切であることが強調されました。そこで「トゥルー・コスト」という映画にもなった、バングラデシュでの工場倒壊事故などが紹介されました。

 

 とはいっても、私たち消費者は具体的に何をすればよいのか。ファストファッションをまったく買わないで生活をすることは現実的に難しいと思います。でも、こういった問題があるということをとにかく知れば、少しずつ行動を変えていけるかもしれません。今回のカフェでは、いま自分が着ている服の裏をちょっと見てみて、それがどこで作られているものなのか、どういった素材でできているものなのか、といったことを考えることから始めました。タグに書かれている情報は少ないですが、そこからもっと調べてみよう、という意識が出てくればよいのだと思います。

 次に、この問題を「グローバルな正義」として議論するために、蝶名林亮さん(倫理学)と吉良貴之法哲学)による問題の整理がなされました。蝶名林さんはこの問題を考えるうえで誰が「主体」であると考えるべきか、それは企業なのか、それとも私たち消費者一人一人なのかといったことを考える必要があるといったことを提起されました。私はそれを補足する形で、では企業や個々人の責任を考えていくうえで、それを実現するための(グローバルな/国家単位の)法制度の仕組みを具体的に考えていく必要がある、といったことを述べました。ついでに、昔の「24時間テレビ」では発展途上国の貧困問題も多く扱われていたものだが、最近は国内の問題がもっぱら扱われている。それがどこまで象徴的なのかはともかく、現在の日本(の若い人?)のあいだでグローバルな貧困問題などへの関心が薄れているのではないか、それを喚起するためにはどうすればよいだろうか、といったこともお話しました。

 その後、参加者全員で自由なディスカッションがなされました。たとえば、「食べ物」の問題は日本でもよく議論されますが(食品偽装の問題などを思い出してください)、そこでの「フェアトレード」のあり方などを参考に、服についても同様の取り組みを盛り上げていけないだろうかといったことが議論されました。実際、いくつかの企業などではその取り組みがなされており、その具体例を紹介してくださる方もいて、たいへん有益な情報交換がなされました。

 そうやって意識変革を促していく一方で、経済のあり方、政治のあり方にも目を向けていくべきだといった意見も出され、問題が多角的・立体的に捉えられたように思います。そうこうするなかで時間があっという間に過ぎ、みなさんそれぞれ、じっくり考えるよい機会になったと感じていただけたようです。「ファッションレボリューション」の活動はこれからも続けられる予定ということなので、今後も第2弾、第3弾の企画を考えていきたいものです。