永田カビ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス、2016年6月)、話題になっていたので読んでみた。以下、いくつかのメモ。
- 作品としては全体的にちょっときれいに描きすぎている感じもあるので(まあそこがいいのだろうが)、続編を読みたいところ。もうあるのかな。
- レズビアン風俗のおねえさんがずいぶんとやさしすぎるのが気になるところで、娼婦=聖母みたいなステレオタイプとのあやういところにある。
- でも母親との身体接触願望は印象的に描かれる一方で、風俗のおねえさんの身体に触れることに強いためらいがあるあたり、このステレオタイプをちょっとずらすものがあるといえるかどうか。
- たとえば裸になってリスカ跡を見せざるを得ないあたり、相応の葛藤がありそうなものだけど、それを1コマであっさり済ますのはどんなものかとか。
- キスはレモンじゃなくてじゅるっとしたトマトの味だった、という気付きから「知っている側」の人になってしまったという感慨は中学生みたいでいかにも淡いけど、うーん、それでいいのかなあ。
- ひどい相手にあたってしまってトラウマになる、といったエピソードもあってよさそうだけど、それは1作目で描かないともうやりにくいですね。話題になりすぎてしまった。
- 男性の場合、「ソープに行け」で全部解決してしまう単純な童貞譚はほとんどなくて、実際はそこでうまくできなくて葛藤を深めるほうが多いだろうし、それは性的承認の全能性幻想に囚われている。
- どっちかというと性的な承認によって一発大逆転なんていう童貞譚じゃなくて、まだこれからがありそうで、でもそこに行けてないもどかしさを漫画の素材にできたという昇華(!)がこの話のお見事なところなのだろうか。
- そんなのを漫画の素材にできてしまう自分、というのを獲得したことで、ノーマルな生き方を押し付けてくる家族や世間に対抗できるようになったというかね。
- とすると本作は、あるかないかよくわからない性的承認欲求をそれ以上にどうこうすることなく、軽やかに手段化してみせた点が面白い、といえるかどうか。